京橋紙業株式会社

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特種東海製紙株式会社

京橋・小川(以下、小川): 今日はよろしくお願いいたします。

特種東海製紙・鈴木氏(以下敬称略): お待ちしていました。こちらこそよろしくお願いします。

小川: まず、『タントセレクト』を選んだ理由なのですが…『タント』と非常に似ている名称ですよね。ユーザーさんが「『タントセレクト』と『タント』って関係あるの?」とお尋ねになることがしばしばあったので、この銘柄のお話を伺ってみようと選んでみました。

鈴木: なるほど。

小川: では、早速ですが…あ、その前に写真を撮らせていただきます。毎回お話を伺う際にお願いしていますので。

鈴木: うわ、緊張しますね。

小川: ご協力感謝いたします。では、最初に…この『タントセレクト』の開発開始はいつごろなのでしょうか?

鈴木: それにつきましては、タントセレクト以前の話からお話した方が開発の経緯がわかりやすくなると思います。少しさかのぼりますがよろしいですか?

小川: はい。是非お聞かせください。

鈴木: 当社は「レザック」を始めとするエンボスシリーズを1960年代から1980年代に開発してきました。いずれの製品もどちらかというと「ジャパニーズコンセプト」的な製品が多く発売されました。

小川: ジャパニーズコンセプト、ですか。

鈴木: 例えば『みやぎぬ』や『レザック80つむぎ』『レザック82ろうけつ』などがそうですね

小川: 確かに和テイストの銘柄たちが揃っていますね

鈴木: 大きく方向が変わったのが1987年の『タント』の発売です。今までの和テイストから見ると、「ノーコンセプト」というのでしょうか、目的としてはカラーパレットというところで開発されました。普遍的な紙の肌で色を豊富に取り揃えて、選んでいただく。

小川: 色が豊富、色を選ぶ、という方向性の製品ということですね。

鈴木: はい。色が多くある。たんと、ある。ということで『タント』という名称になりました。

小川: 確かイタリア語にもかけていましたよね。

鈴木: Tanto、ですね。

小川: 最後のoを取って製品名。

鈴木: …という流れがあって、エンボスにおいてもコンセプトをどこかに偏らせない、普遍的なエンボス紙があるべきだろうと。

小川: なるほど。

鈴木: そういうことをベースにして2000年から新エンボス紙のプロジェクトが立ち上がりました。

小川: なるほど。ところでこの銘柄の「セレクト」という部分なのですが、これは何をセレクトする(した)、「セレクト」なのですか?数パターンあるエンボスからとっておきをセレクトした、とかでしょうか?

鈴木: 実は「セレクト」には二つの意味が込められています。

小川: 二つ、ですか

鈴木: はい。一つが、名前の通り『タント』の中から色をセレクトしてきていること。

小川: ええ。

鈴木: もう一つは、柄(エンボス)を複数の中からセレクトできますという意味を込めています。

小川: ということは、最初から柄をどんどん増やしていく予定で?

鈴木: ええ、当初からその予定でした。

小川: これは…大プロジェクトだったのですね

鈴木: はい(笑) 当初は3年に一度、増柄を考えていました。この銘柄は2005年発売で、この時はTS-1、2、3、4まで。計画より1年遅れましたが2009年にTS-5、6、7を追加しました。

小川: その際にTS-2とTS-4を受注扱いに見直されたのですよね。

鈴木: はい。そして、2014年に最新のTS-8、9、10が発売されました。

小川: ところで…(さわさわと見本帳を触りつつ)…この製品は両面エンボスですよね。コストもかかってしまうし、製造時もより気を使うと思うのですが、その理由について教えていただけますか?

鈴木: 一言で言うと、より風合いを持たせるためです。せっかくエンボスについてのご質問が出たので従来のエンボス紙との違いについてもお話しましょう。

小川: 違い、ですか

鈴木: はい。先ほどお話したように1960年代から80年代に開発された、コンセプチュアルな製品たちは大柄のエンボスを採用していました。印刷もワンポイントを想定していたため、特に問題はありませんでした。

小川: 確かに『タントセレクト』のどの柄と比較しても当時開発された製品たちはダイナミックというか大柄のエンボスパターンですよね。

鈴木: 普遍的なエンボス、を考えたときに印刷のことも考慮しました。印刷される画像、グラフィックに干渉しない小柄なエンボスを採用しようと。

小川: 小柄…確かに柄の一つ一つが小さいですね

鈴木: 微細な柄をシャープに深く。なおかつ両面に…が、この製品の肝になっています。

小川: そうそう。裏表エンボスがあるということは用途にもよりますが、とても助かっています。

鈴木: 実は、エンボスを両面にしたことによる効果、というのもあります。この製品、ご覧になっていただくとよくわかるのですが、透けます。この透けた時に裏側の模様が表側に反映されてくるのです。

小川: まさか…

鈴木: ええ。それによってより複雑な模様を表現しているんです。

小川: それはすごいですね。透けることも計算に入れて…

鈴木: 例えばTS-1を片面だけで済ますと、平面的になってしまい今と同じような風合いは得られません。

小川: なるほど…

鈴木: それをうまく使ったのが、特にTS-9とTS-10です。TS-9のエンボスは裏表でクロスするように押しています。

小川: これは…気が付きませんでした。考えた方、凄いですね。

鈴木: TS-10については、裏表のエンボス自体異なります。表面はリーフですが、裏面はハニカムドットです。

小川: うわ、本当ですね

鈴木: TS-10は初めて表裏のエンボスを変えてみた、挑戦的な製品です。

小川: これ、知っている方少ないと思いますよ。ではTS-10の表はリーフ面?

鈴木: はい。そうなります。

小川: TS-10は自分も大好きな柄なんです。いや、そうだったんだ…

鈴木: そして、開発陣から言われてきたのですが、ぜひこれはアピールして欲しいと(笑)

小川: ? 何でしょう??

鈴木: 通常、エンボスロールを作る際にはロール全体の大きさでデザインは作りません。小さめの…A3くらいかな…パターンを作っておいて、それをコピーして繋ぎ合わせてロール全体の模様にします。

小川: まさか…

鈴木: はい。これに関してはランダムに作りたかったとのことで、ロール全体どこを見ても同じパターンがない。ロール全体のデザインをコピーなしで起こしています。

小川: 凄まじいですね。

小川: 今後の展開について教えていただけますか?

鈴木: まだ、内緒です(笑) 欲しいエンボスがあれば、ご意見お待ちしています

小川: 最後に、ユーザーのみなさまに一言いただけませんか?

鈴木: 『タントセレクト』のいいところは、視覚的な良さだけでなく、触っていただけたときにもよさを感じていただける製品です。この製品をきっかけにして、見た目だけではなく、紙は触っても面白いと気付いて頂けるきっかけにしていただければ、と思います。

小川: 今日はありがとうございました。

鈴木: はい、ありがとうございました。

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