京橋・小川(以下、小川): どうも、お久しぶりです。今日はよろしくお願いいたします。
王子エフテックス・河村氏(以下敬称略): 『OKニューブックスタイル』以来ですね。こちらこそ、よろしくお願いします。今回は一人同席します。
王子エフテックス・富澤氏(以下敬称略): よろしくお願いします。
小川: ええ、どうぞよろしくお願いいたします。前回に引き続いてお時間を頂きましてありがとうございます。さて...恒例となっていますがお話を伺う前に、撮影を済ませますね...
河村: 実はついさっき撮影があると話したばかりで。
富澤: 3分ほど前に話をされました(笑)
小川: みなさん、撮影と聞くと「ええっ!?」となりますが、すぐ終わりますので。(数ショット撮影)ご協力感謝いたします。
小川: さて、本日は『OKミューズガリバー』シリーズについてお話を伺わせていただきます。まずは、この銘柄を開発するに至った、そもそものスタートは何だったか。そのあたりからお話をお聞かせいただけますか?
河村: 当時開発していた本人ではないのですが...もともと王子製紙で塗工紙の営業をされていた方が、高精細印刷の現場で「肌がある紙もいいんじゃないか」という話を頂いていたところから、と聞いています。そうしているうちに、他社から『ヴァンヌーボ』という紙がリリースされ、自分たちも作ってみようと。
小川: なるほど、既に構想があって、ということなんですね。
河村: 1994年に『ヴァンヌーボ』の『V』と『F』が出まして、翌年の1995年に『ガリバーしろもの』がリリースになりました。その後、『エクストラ』と『リラ』を追加しました。
河村: 他社は印刷効果でのバリエーション展開、もしくは肌感(表面の風合い)の違いで商品を展開していたと我々は分析しています。しかし、エフテックスでは当時は商業印刷よりも出版業界向けに強みを持っていたので、結果的にマットな仕上がりのものになりました。
小川: なるほど。
河村: 特化したつもりはなかったのですが、出版業界からは「肌合いのあるものがいいよね」という話が出て、『エクストラ』や『リラ』、『かわしぼ』という柄の方向に進化していきました。
小川: なるほど。しかし、ここまで伺った中に「グロス」がまだ登場してきませんね。引き続いて各銘柄誕生についてお聞かせ願えますか。
河村: ええ。実は出版を想定してリリースしたところ、フタを開けてみたら他社品も含めて商業印刷向けのグロス需要がとても大きかったのです。その点では若干の出遅れとなってしまいました。挽回というワケではないのですが、グロス感を持ち当時は古紙のニーズがとても高まっていたことも含めてリリースしたのが『OKエコプラス』でした。市場にも受け入れられて、順調に伸びていたのですが、もう一伸び欲しいと。
小川: もう一伸び。
河村: はい。『エコプラス』はいいのだが、もう少し風合い、肌感が欲しいという声があったので、そこを狙ったのが『OKミューズガリバーHG』でした。実はこの『HG』ですが、速乾性があったということ、ご存知でしたか?
小川: いえ...より白く「ハイグロス」の『HG』という認識でした。あ、もしかして、この時期って...
河村: ええ、『OKトップコート+』がリリースされた時期に塗料を変更して、印刷上がりは変わらずに3割程度乾燥時間を短縮しました。 ただそこで、2008年1月11日にあの問題が発覚しました。
小川: 古紙配合の乖離問題ですね...
河村: ええ。元々2008年には新移抄機への移抄を予定しており、また古紙配合品の次の流れとして森林認証も考えていた時でした。ただ、それらの紙はまだ新抄紙機の工事も終わっていなかったので形になっていませんでした。
小川: その時期でしたね、『5C』や『7C』という名称の製品が出てきたのは。
河村: はい。新銘柄の『プラスター』は古紙乖離による銘柄変更(5C)と、抄紙機変更による銘柄変更(7C)を短期間で行う事となりました。そこに先述の『HG』もあり、ラインナップがとてもわかりづらくなってしまいました。
小川: それで、先日のリニューアルにつながっていくのですね。
河村: はい。今回のリニューアルの最大のポイントは、わかりやすさ、です。
小川: 親しまれて普及していた名称を統合するのは大変な決断だと思います。『プラスター』などは完全に統合されてしまいましたし。
河村: そうなんです。ブラインドテストを行ったりして、慎重に集約化しました。『HG』と『プラスター』では圧倒的に『HG』品質が支持されました。ただ、『プラスター』を統合するわけですから、コスト的に大きな上昇があっては問題になります。わかりやすく言うと『HG』品質で『プラスター』価格に近いところを狙いました。
小川: だから、『マット』と価格差が出ているのですね。『ミューズガリバー』の新シリーズでなぜ『グロス』と『マット』の価格帯が異なるのか気になっていました。
河村: それはそうと...わかりやすく、と言いながら『OKミューズガリバーグロス』...名前長いですよね。
小川: はい(笑) 実はお客様からも「OKミューズガリバーシリーズの名称が長くて、どう略したらよいのか」という質問を頂いたこともあります。正式な略称、あるのですか? わたしは「OKMG~」とメモするようにしているのですが...
河村: 自分たちは『ガリバー』と呼んでいますね。『OKミューズ』は抜いて。
富澤: そうですね。
小川: あっ、ずいぶんとシンプルですね。
河村: 何故かと言うと、『OK』は王子品に付く名称です。
小川: 話の腰を折ってしまい申し訳ありませんが、そもそも『OK』とは何の略で?
河村: 「王子・春日井」の略です。
小川: 新人の頃、「王子・呉」の略ではと聞いたことがありましたが...
河村: それは違います(笑)
富澤: (笑)
小川: 失礼しました(笑)
河村: そして、安倍川製紙が作っていたファンシーは全て『ミューズ』を冠していました。これは商標の問題からと聞いています。たとえば、「ミューズコットン」は、ただの「コットン」では一般名称のため商標登録が出来ないのです。
小川: そんな理由があったのですね。
河村: 一般名称の前に、任意の3文字、これが必要だったというわけです。
小川: なるほど。ちなみに、なぜ『ガリバー』と?
河村: 日本で一番大きな銘柄になって欲しい、ガリバー銘柄になって欲しい、という意味を込めて命名されています。
小川: ...話を戻しますね。そういう願いを込めた銘柄で、「わかりやすく」という方向のリニューアルをなさいました。皆さんが普段お使いの『ガリバー』という名称にしなかった理由はなんでしょうか。
河村: これは、『ガリバー』という商標が他社さんで既に取得されておりまして。
小川: 紙関係で、ですか?
河村: そうなんです。しかも今は使われていませんでした。ならば、と「不使用申請」というものを出して我々が使用できるように手続きをしたのですが...リニューアル品のリリースに間に合いませんでした。『ガリバー』という名称自体を見直す動きもあったのですよ
小川: ええ!?
河村: ただ、ここまで手を付けてしまうと『リラ』や『エクストラ』まで変えることにつながりかねなかったので、そのままでいこう、と。ただ、最近のエフテックスが製作した見本帳をご覧いただけるとよくわかるのですが...
小川: あ、『OKミューズ』のフォントの級数が...
河村: はい、小さくなっています。
小川: そういえば、現行の『グロス』と『マット』、白紙ではほとんど見分けがつかないといわれていますが。
河村: あ、簡単に見分けられますよ。ええとですね、書いていいサンプルと極太油性ペンで判別可能です。
富澤: はい、OPLのサンプルですが、この裏に試してみましょうか。 (差し出されたサンプル。河村氏が極太油性ペンを取り出してキュキュっと線を引く)
小川: おぉ! 乾くと分からなくなりますが、書いた瞬間、グロスは光りますね!
河村: 細いペンだと分かりづらいです。「マジックテスト」とよばれている方法です。意外とはっきり分かるでしょう?
小川: ええ。こんな簡単に判別できるとは驚きです。覚えておきます。...さて、リニューアル後の『ガリバー』についてですが、こだわりのポイントを教えていただけますか。
河村: 手触り感にはかなりこだわっています。紙、ということで触る媒体に使用されることが多いので、触った際に気持ちのいい紙にしたいという思いは強いです。
小川: 他にはございますか?
河村: そうですね、色味、白さにもこだわりがあります。心地よい白さに仕上がっていると思います。
小川: 印刷との相性でお勧めの点がありますか?
河村: メタリック系との相性が良いことはおすすめしたい点です。蛍光インキの発色も綺麗ですよ。
小川: リニューアルの際の見本でもその点は強調なさっていましたね。
河村: 印刷と言えば、『マット』についてお話したいことがあります。
小川: 『マット』ですか、こちらはリブランドということになりますね。
河村: はい。他社品でマット調のものが減っていく中でここまでマットでしっかりとインキが乗せられるのはあまりないかと思っています。一般的に塗工量とグロス感は比例するので、グロス感がでない製品をマットとしているものも結構あるようです。よく『マット』は色が乗らないというのはこれが理由ということもあります。
小川: そうなんですか。
河村: 『ガリバーマット』は受理層がしっかりと形成されていますから、専用の塗液と相まってギラつかずに印刷を仕上げられます。
小川: なるほど。それは『ガリバーマット』の大きな特徴ですね。
小川: それと先ほど手触り、と伺いましたが...(紙をいじりながら)、この紙はしなやかに感じますよね。
河村: はい。円網抄紙機で生産しているため、紙がしなやかに仕上がっています。あとは、他社品と比較してなのですが、若干嵩高に仕上がっていると思います。これも『ガリバー』の推しの一つです。
小川: 最後に、この後の展開について教えてください。
河村: 先日、新しい見本帳を作りました。内容はリニューアル時に作ったブックレットの小型ダイジェスト版です。『ガリバー』の特徴がよくわかるものになっているので、その内容を説明しつつ配っていただけると嬉しいですね。
小川: 本日はありがとうございました
河村: ありがとうございました
富澤: ありがとうございました
今回のインタビューを受けて、王子エフテックスさんのご協力を頂き、京橋紙業の1階にあるペーパーショールームにて3月上旬に「ガリバー」展示会を開催します。
新ダイジェスト見本帳やその見どころ、製品見本などを展示する予定です。
開催内容・期間につきましては別途お知らせいたします。
王子エフテックス株式会社
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